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高齢化する一次産業におけるDX停滞の心理学的要因

2025年7月1日

​要旨

日本の農業・林業・水産業など一次産業は深刻な高齢化と人手不足に直面し、政府が「農業DX構想」等を推進しているにもかかわらず、デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入は依然として停滞しています。本論文は、その背景を心理学的観点から解明し、行動経済学、認知バイアス、老年心理学の3つの視点から分析しました。

まず、行動経済学の視点では、高齢の従事者に強い「現状維持バイアス」や「損失回避の傾向」が働き、将来の効率化よりも現状の安定を選好する心理がDX導入を阻害していることが明らかになりました。次に、認知バイアスの観点からは、「確証バイアス」により失敗事例ばかりに注目して成功事例を退けたり、長年の経験に基づく「過信」によって新技術の必要性を軽視したりする傾向が指摘されます。さらに老年心理学の視点では、「テクノロジー不安」や「学習能力・記憶力の低下」、さらにはITスキル不足といった要因が、高齢従事者に強い抵抗感を生み出していることが示されました。

こうした心理的要因は単独ではなく複合的に作用し、「変化より現状維持を好む」「失敗リスクを過大評価する」「自分の経験を過信する」「新技術は難しいと感じる」といった心理メカニズムがDXの普及を阻んでいます。これに対し本論文では、①危機感と短期メリットを明確に提示する、②同業者の成功事例やデータを共有して認知バイアスを是正する、③高齢者に優しいUI/UX設計やサポート体制を整備する、④世代間協働による段階的導入を進める、といった実践的方策を提言しました。

結論として、一次産業のDX推進には制度や技術的整備だけでなく、「人間心理に寄り添ったアプローチ」が不可欠です。高齢の担い手に「自分にもできる」「変えてみよう」と思わせる仕組みを整えることで、初めてデジタル技術は現場に浸透し、生産性向上と持続可能性確保に結びつきます。本研究は、一次産業のDX停滞を解消するために心理学的視点の重要性を示し、今後の政策設計や現場支援に有益な知見を提供するものです

DXONEは一次産業に特化したデジタルソリューションを提供しています。 私たちは、業務効率化を図るためのシンプルで実用的なツールの提供と、デジタル変革を成功させる徹底したコンサルティングサービスを通じ、一次産業の中小企業の成長を支援します。

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