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食品業界におけるサイバー攻撃リスクと中小企業の備え

アサヒグループHD事例から 

2025年10月1日

2025年9月、大手飲料メーカーのアサヒグループHDはサイバー攻撃を受け、国内の受発注・物流システムが全面停止、生産ラインも止まる深刻な事態に陥りました。個人情報流出は確認されなかったものの、ランサムウェアによる被害と見られ、国内のサプライチェーン全体に混乱が広がりました。この事件は「食品業界におけるサイバー攻撃リスクの深刻さ」を強く浮き彫りにしたものです。
 

受発注や物流の停止は、単なるシステム障害にとどまらず、売上喪失・信用低下・在庫滞留や廃棄ロス、さらには新製品の発売中止やイベント中止といったマーケティング計画への影響に直結します。

 

アサヒのケースでも北海道工場での出荷停止を皮切りに、生産停止、新商品の発表会中止、グループ各社での発売延期などが連鎖的に発生しました。被害が長期化すれば、週単位で数百億円規模の損失が生じる可能性があり、中小企業にとっては数千万円規模の損失でも資金繰りを直撃し、倒産リスクに直結します。

 

食品は鮮度に制約があるため、数日間の停止でも廃棄や供給断絶につながり、サプライチェーン全体に波及するのです。実際、海外でも同様の被害が報告されています。

 

英ジャガー・ランドローバーは1か月の停止で1週間あたり約100億円の損失、米青果大手ドール社はランサムウェア被害で10億円超の損失を計上しました。食品・飲料業界は「停止に弱い」特性を持つため攻撃者に狙われやすく、2025年には同業界への攻撃が前年の倍増という統計も示されています。
 

特に中小企業は脆弱です。IT人材やセキュリティ予算が不足し、バックアップや代替手段を持たないケースが大半。さらに「規模が小さいから狙われない」という誤った認識が油断を生みます。しかし攻撃者は中小企業を踏み台に大企業へ侵入する戦略もとり、日本でも中小部品メーカーへの攻撃がトヨタ自動車の工場停止に波及した事例があります。

 

食品産業の中小企業も例外ではなく、「狙われない企業は存在しない」という認識が必要です。本稿では、中小企業が取るべき対策を以下の4点に整理しています。

  1. クラウド化と専門サービス活用
    受発注や在庫管理をクラウドSaaSに移行し、セキュリティ更新や監視を専門ベンダーに任せることで攻撃耐性を強化。
     

  2. バックアップとBCP整備
    オフラインやクラウドに日次でデータを退避し、FAX・紙帳票での代替運用や緊急連絡体制を含むBCPを策定・訓練。
     

  3. ネットワーク分離と冗長化
    ITとOTを分離し、複数回線や副系サーバーを用意して業務を完全停止させない設計に。
     

  4. 基本的セキュリティ対策
    パッチ適用・多層防御・従業員教育・権限管理など基本を徹底することが最も有効。

     

結論として、サイバーリスク対策は「コスト」ではなく「事業継続と信用を守る投資」です。平時に備えを講じることで初めてDXや新規事業拡大にも安心して取り組めます。アサヒの事例は食品産業全体への警鐘であり、中小企業の経営層は「備えは経営課題」であると捉え、今日から行動に移すべきです

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